ロサンジェルス

ロサンジェルス中心部には、高層ビルが建ち並ぶ。デパート等も含めて、大きな建物が比較的広範囲に点在している。
今なお、高層ビル建設中らしきクレーン車が、数多く見られた。
電車通勤が当たり前の日本と異なり、ほとんどが車通勤のアメリカン・ビジネスマン。
『サンフランシスコにも増して駐車場の需要があるに違いない。』というのが、空港から移動する車の中で私が抱いたロサンジェルスに対する第一印象だ。

 ロサンジェルスの駐車管理会社

ロサンジェルスでは、アマノの河原氏について頂いた事もあり、河原氏から現在のアメリカにおける駐車管理会社事情に関する話を聞くことができた。
現在の最大手はセントラル・パーキング、その年商は約900億円。次にスタンダード・パーキングが続き、年商約500億円。この2社がダントツで抜け出しているとのこと。
しかし、この2社の他にも、年商100~200億円の会社は何社もあるらしい。
日本の最大手、タイムズを経営するパーク24の年商が約320億円ということを考えると、アメリカの駐車場管理ビジネス市場の大きさが良くわかる。
今回は、MGMプラザ駐車場にて、業界最大手セントラル・パーキングのマネージャーグレゴリ―、ラッセル両氏から話を聞くことができたので、その管理方法等を後に記述する。

 パーキングメーターの利用方法

MGMプラザ駐車場に入場する際、入口には体格の良い男性(写真25)が1人立っていた。

写真25

我々は彼から『駐車場に何の用事で来たか』と聞かれ、さらに『入場するには身分証明証が必要だ』と告げられた。
パスポートを提示することによって入場することができたが、『駐車場に入るだけで身分証明賞の提示とは何と仰々しい』と感じた。
しかし、後で聞いたところによると、このMGMプラザは映画制作会社MGMのオフィスビルで、映画監督や原作者等、俗に言うVIPの方々も利用する駐車場だそうだ。
2001年9月のテロ発生以来、セントラル・パーキングが自主的に警備会社に警備を依頼して、入口での身分照会を行なっているのだそうだ。
そう言われてみると、場内には、ポルシェやらフェラーリやら、超のつく程の高級車が何台か停まっている。
このMGMプラザ駐車場は、3Fからなる2.965台収容の自走式有人駐車場。その内の約2,300台が契約車とのこと。
営業時間は7:00~23:00。
土曜・休日は閉場日で、その間も契約車はパスカードによって入出庫可能なのだそうだ。
サンフランシスコの駐車場同様に、スピードバンプはあるし、場内の照明も水銀灯を使用していて明るい。
出口・入口は、ともに各6ヶ所ずつ。
その内、契約車専用のもの(写真26)が各2ヵ所ずつある。

写真26

自動精算機は導入しておらず、契約車専用を除く各精算所に、1人ずつ係員が座っている。
精算所には、駐車券投入口も装備されている。
場内に監視カメラは数台しか見当たらない。
この駐車場では、特に入口での身分照会をしっかり行なっている関係もあり、監視カメラはあまり必要がないのだそうだ。
その代わり、ガラス越しに見たMGMビルの監視センターには、何十台ものモニターに様々な角度から撮られた監視カメラの映像が映し出されていた。
この駐車場のシフトは、(VALET要員の12人を含めて)計18人でまわしているそうだ。
一見多く感じられるが、VALET要員を除くと6人で約3,000台を管理していることになる。
一人当たり500台の計算だ。
この人数でこの規模の駐車場を管理できるというのも、『利用客の80%近くが契約車であということが大きな理由のようだ。
ロスの高層ビル群を見た時に抱いた私の第一印象の通り、車通勤のビジネスマンが多数いて、彼らはたいていそのビルの駐車場と月極契約をしているとのこと。

 VALET PARKING

この駐車場の中にもVALET PARKINGがある。
しかし、いかんせん、場内があまりに広いため、何と6ヶ所ものVALET用受付所(写真27・28)がある。


写真27

写真28

 

各受付所には2人ずつ勤務していて、1ヶ所の受付における1日の平均VALET利用数は、40台前後だそうだ。
思ったより少ない。
『今後の参考に』と、VALET担当の方達から話を聞いた。
VALET方式を行なう上で一番気になるのは、『車内積載物の紛失』や『車の損傷』に関する利用客からのクレームだが、彼らに言わせると『全く無い』らしい。
特に彼らはVALETを担当してから8~15年のベテラン揃いで、移動中に車をぶつけることはまず無いとのこと。そして、やはりこの駐車場でも一般車の混雑時には、VALET専用スペースに通常の倍近い台数を収容するそうだ。
また、サンフランシスコの駐車場と異なる点としては、壁一面に映画の広告等の絵が描かれていたり、ポスターが貼られたりしているスペース(写真29)がある。

写真29

映画制作会社のビルならではで、とても華やかな印象を受けた。また、VALET用受付所の入口には、スピードバンプの代わりに直径10cm程の円形のプラスチックが、通路上に盛り上がるように設置(写真30)されている。

写真30

『フェラーリ等の超高級車には車高が最初から低いものがあり、通常のスピードバンプでは車を損傷する恐れがあるため、こういった形状のものを採用している』とのこと。
なる程、これならば日本の駐車場でも設置できるかもしれない。
また、場内が非常にきれいな点を尋ねたところ、外注で清掃会社を雇い、月に2回、閉場時間中に徹底清掃を行なっているとのこと。
MGMプラザ駐車場に限らずロサンジェルスの駐車場は相対的に、規模がサンフランシスコと比べるとさらに一回り大きく、2,000~3,000台収容の駐車場が多い。
どの駐車場にも、ゴルフ場にあるカートのような小型車(写真31)が置いてあり、実際それに乗って係員が場内を移動している。スケールが大きい。

写真31

 セントラル・パーキング

駐車場内をくまなく案内して頂いた後に、グレゴリ―、ラッセル両氏に駐車場管理に関して詳しく話を聞いた。
セントラル・パーキングの現在の管理物件は約4,000件。その内、自社で経営している物件はわずか200件。
残り3,800台の内、『土地の借り上げ』と『駐車場管理のみ』が半々、つまり1,800台づつ位だそうだ。
土地の借り上げの場合、中~大規模(500~3,000台)の自走式駐車場に的を絞り、入出庫ゲートや発券機等の初期設備投資の回収も視野に入れ、最低5年以上の契約をするそうだ。
2001年9月のテロの影響で、管理するどの駐車場も相対的に売上が落ち込んだらしいが、2002年2月を境にどの駐車場も共通して盛り返してきてはいるとのこと。
だが、まだテロ以前の売上には到達していないそうで、もう少しの時間が必要と見ているらしい。
通常は、グレゴリ―、ラッセル氏ともにそれぞれ別の担当エリアがあり、1人で8~12件の物件を管理していて、管理物件を行ったり来たりしているそうだ。
係員の仕事は主に精算を行なうだけなので、特に係員に対する特別な教育をする必要もなく、主に『駐車場やその管理システム(ソフト)に異常がないか』をチェックして歩いているそうだ。
こういった規模の大きい話を聞くと、自分の現状と比べることができ、将来に向け、さらに上を目指す意欲が沸いてくる。