サンフランシスコ
サンフランシスコの道路事情
サンフランシスコ中心部の道路は全てマス目上に整備されており、そのほとんどが一方通行である。
しかも、日本の一方通行と異なり最低2車線は確保されている。
日本なら間違いなく相互通行にするであろう道幅だ。
一方通行であることにより、その通りに面する建物なら左右どちらに位置しようと、その建物の前に車をつけることができる。
また、全ての通りに名前がつけられており、交差する2つの通りの名前さえ分かっていれば、目的地にたどり着くことができる仕組みになっている。 路上駐車場&パーキングメーター 街中でまず目に付くのは、路上駐車スペースのパーキングメーター(写真1・2)と駐車禁止時間を示す案内板(写真3)の多さだ。
(ちなみに、「通りの名称は市が管理しており、お金さえ出せば企業名や個人名をつけることができた」とのこと。)
この形態は、地元の人々には大変使い勝手がよく、逆にまったくの新参者にとっては「一度目的地を通り過ぎてしまうと、中々元に戻れない。」と言った具合に、あまり優しいものではない。
写真1 |
写真2 |
写真3 |
パーキングメーターの利用方法
パーキングメーターの利用方法はいたって簡単。
料金前払い式で、5セントで2分、10セントで4分、25セントで10分、・・・といった具合に投入金額によって利用時間が選択できる。
最大で30分まで。
30分を超過した場合は、再度支払いに来なければならない。
基本的には、短時間で用事を済ます車用のスペースで、長時間駐車する場合は、一般駐車場を利用するそうだ。
しかし、それぞれのパーキングメーターを見てみると、案外『EXPIRED(利用時間終了)』の表示があるものが多い。
このスペースの管理はサンフランシスコ警察が行なっているそうだが、見たところ回収率は悪そうだ。
ただし、路上駐車スペースに駐車中の車がたとえ料金支払違犯車であろうと、運転している側から見ればそれ程問題は感じられない。
路上駐車スペース
路上駐車スペース用に左右1車線づつ、計2車線分余計に確保されている道路が多い。
従って、市中心部を車で走っていても、日本とは異なり、路上駐車が気に(邪魔に)なることはほとんどない。
『道路も駐車スペースとして皆で利用する』といった観点から道路作りが行なわれた印象を受けた。
また、全ての路上駐車スペースは曜日に応じて早朝駐車禁止となる。
これは、市が清掃車を使用して行なう道路清掃のため。
「この場合の違反車は即刻レッカー移動されるそうで、違反車はほぼいない」とのこと。
この種の看板には、必ずと言って良い程『TOW―AWAY(レッカー移動)』の文字が表記されている。
違犯車にとって、最大の脅威がレッカー移動なのは日米共通のようだ。
一般駐車場(路外駐車場)
概 要
一般駐車場に目を移すと、日本の駐車場との相違点が多々見られる。
まず、駐車場の形態だが、機械式駐車場は1ヶ所もない。
(その広大な土地を考えれば当然のことだが。)500台~2,000台収容の大型立体自走式駐車場がメインで、その駐車場数も日本より明らかに多い。
さらに、ところどころに30~100台収容の平面駐車場がある。
『交通手段は車がほとんど』のアメリカでは、『一家に一台ではなく成人一人に一台』に近い割合で車を保有しているそうで、駐車場の規模が大きいのも納得がいく。
(ちなみにアメリカの高速道路には『カー・プール』レーンというものがあり、2人以上乗車している車専用の優先レーンがある。
これは、増加する一方の車保有台数に対して、交通渋滞の緩和や環境問題を視野に入れた上で、『1台あたりの乗車人数の割合を少しでも増やそう』というアメリカ政府の苦肉の策だそうだ。)
駐車場の入口を見てみると、ほとんどの駐車場で、『SELF PARKINGはこちら・VALET PARKINGはこちら』といった案内(写真4・5)が表示されている。
写真4 |
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SELF PARKING
SELF PARKINGとは、自分で入庫から出庫まで全て運転する方法で、ゴールデンパーキングを含めたほとんどの日本の駐車場で行なっているやり方。
VALET PARKING
VALET PARKINGとは、係員が入出庫作業を運転者に代わり行なう方法で、日本では主にホテルの駐車場で採用している程度で、一般駐車場ではまだほとんど取り入れられていない。
どこのVALET PARKINGでも、あらかじめ『サービス料として駐車料金+○○ドル(相場は5ドル)』と設定されている。
VALET PARKIGに慣れていない日本人の感覚からすると、『お金がかかるなら自分で入れよう』といったところか。
ただし、例えば『女性と食事する』ようなシチュエーションならば、(車内積載物の盗難や車の損傷がないなら、)幾分か優越感を味わうことができ、悪くはないシステムだ。
いずれにせよ、利用客にとって選択肢があるということは悪いことではない。
一方、別の視点から見ると、VALET PARKINGには利用客の選択肢を増やすという以外に、運営側にとって非常に大きな利点がある。
それは、車のカギを預かることにより、『駐車場内の通路も駐車スペースとして利用できる』という点だ。
アメリカは比較的、都市中心部であっても利用車に対して十分な駐車スペース数が用意されている。
よって、大型立体駐車場では満車になることはほぼ有り得ず、今回利用・見学した立体駐車場はどこもかなり空きスペースがあった。
しかし、小規模駐車場に目を移すと、30台程収容の平面駐車場に60台近く駐車してある光景を実際に何度か目の当たりにした。
VALET PARKINGは、混雑する駐車場において土地の有効活用を行なう上で非常に有効な手段と成り得よう。
むしろ、スペースを有効に使えるならば、サービス料等とらずになるべく多くカギを預かりたいところだ。
第1ゴールデンパーキングにおいても、毎週末に見られる入庫待ちの風景を考えれば、たとえ運転手用に係員を2,3人増員したとしても(さらに、その運転手の内の何人かを現存の社員が努めるならば)十分に導入の価値があるように思う。
(あくまでも、カギを預けない一般利用客の邪魔にならないことが大前提ではあるが。)
駐車の仕方
駐車場内に目を移すと、立体・平面にかかわらす場内は全て『前向き駐車』(写真6)で統一されている。
写真6
日本の駐車場とは正反対だ。しかも、『通路走行中に出庫車がいる場合には、出庫車を優先させる』ということがマナーとして根付いているそうだ。
さらに、前向きで入れやすいように、どの車室も通路に対して垂直ではなく少し斜めに設置されているし、バックで車を出しても十分安全な通路の幅がとられている。
これだけ通路に幅がとれるのはアメリカならではで、日本ではあまり考えられない。
実際アメリカ式のほうが出し入れしやすいし、車をぶつける可能性も低い。
利用する側からするとアメリカ式が望ましいのは間違いない。
その広さだけを飛行機のクラスに例えるなら、日本の駐車場はエコノミーで、アメリカの駐車場はファーストクラスといったところだ。
スピードバンプ
さらに駐車場内で目にとまるのが、通路上にあるコブだ。
これは、『スピードバンプ』(写真7)と呼ばれるもので、場内走行中の車の暴走を防ぐための設備。
写真7
ゴムでできていて、多少の形状の違いはあれど、どこの駐車場にも必ず設置されている。
主に、出入口・通路の交差点等、一時停止を促すような位置に設置されている。
実際スピードバンプ上を走行してみたところ、思ったより車に伝わる振動が大きく、徐行(時速10km以下)運転をしないと、車が弾んでしまう程だ。
よって、その効果は絶大だ。
ただし、確かに車のスピードを下げさせるには有効だが、日本への導入といった視点から見ると、日本には車高を意図的に下げている車が多く、車の損傷の原因になりかねない。
よって、『すぐに導入』というわけにはいかないだろう。
駐車場内の照明
日本の駐車場と異なる点といえば、場内の照明の明るさ(写真8)も挙げることができる。
写真8
中には蛍光灯を使用している駐車場もあるが、多くは水銀灯を使用し、非常に発色が良い。
その割合は、水銀灯8:蛍光灯2程。
蛍光灯と比べると、光の色がオレンジっぽく広がり、温かみを感じさせる。
リンカーンセンター駐車場のマネージャーに水銀灯採用の理由を尋ねたところ、『より遠い位置からでも駐車場内が良く見えるので、防犯の役割を果たす。』とのこと。
確かに、外から駐車場を見た場合も、場内の様子が非常に良くわかる明るさだ。
各階毎に異なる色で統一
日本の駐車場との違いはまだある。
大型立体駐車場の壁なり柱なりが、各階毎に異なる色で統一(写真9)して塗装されている。
写真9
これは、『デザインを重視して塗装した』というよりも、まず第1に『迷子を減らすため』に考えられた方式だそうだ。駐車場の規模が大きくなる程、そういった問題も増えてくるのであろう。
今後の参考になる。
しかも、迷子対策を抜きにしても、各階毎の鮮やかな色の壁や柱は、利用客に非常に良いイメージを与える。
第1ゴールデンパーキングでも、極力経費のかからない方法(=自分たちで塗装作業を行なう等)で、壁や柱の塗装をぜひ検討したい。
PAY ON FOOT
また、無人の平面駐車場においては、日本で言う『コインパーキング』のアメリカ版といえるような駐車場が存在した。
『PAY ON FOOT(徒歩で支払いに行く)』(写真10・11)と呼ばれる駐車場で、日本にあるようなフラップは存在しない。
写真10 |
写真11 |
あくまで白線内に普通に車を停めるだけで、『料金前払い、料金体系は12時間12ドルの一種類のみ』という設定がほとんどだった。
路上駐車スペースの集合版という印象を受けた。
平日の14時~17時に利用・見学したところ、どのPAY ON FOOTも8~9割は埋まっていた。
精算機が一機あるだけ(写真12・13)なので、初期投資がほとんどかからず、日本のコインパーキングのようにフラップ絡みのトラブルが皆無なところが、このシステムの利点だ。
写真12 |
写真13 |
逆に『不正の取締りが困難で駐車料金の回収率が悪いというリスクの方が大きいのでは?』と感じていたが、各地のPAY ON FOOTを見たところ、ほぼ100%に近い割合で各利用車のダッシュボードに購入済チケットが提示(写真14)されている。
写真14
路上駐車スペースにて『EXPIRE(利用時間終了)』表示のパーキングメーターが連発だったことは、『お役所側の回収意欲が薄い』ということで納得がいくが、『この設備でこれだけの人がまじめにチケットを購入している』理由が全くわからず、(コネがなくどのPAY ON FOOT管理者に話を聞くこともできずに、)皆で思案に明け暮れていた。
そんな折、幸運にもあるPAY ON FOOTで集金担当者が通りかかり話を聞くことができ、その謎を解明することができた。
ここで聞いたPAY ON FOOTの管理方法に関しては、この後の駐車場管理方法にて詳しく記述する。
駐車場の管理方法
概 要
次に、駐車場の管理方法についてだが、日本同様に、立体・平面ともに有人の所もあれば、無人の所もある。
有人駐車場に関して共通していえるのは、少なくとも入場時の発券作業については利用客自ら行なうということだ。
サンフランシスコだけで10ケ所以上の有人駐車場を利用・見学したが、係員から駐車券を渡されることはなかった。
あくまでも出庫時の精算業務に関して自動精算機を導入しているか否かで、その駐車場の有人・無人が決まる。
アメリカでは、人件費と機械導入及び保守費用を比べると断然人件費の方が安いそうで、自動精算機の置いてある駐車場はかなり少ない。
ちなみに、有人の駐車場においては、経営側はどちらかというと、駐車場の管理と言うよりむしろ、係員の不正防止の監視に力を注いでいるそうだ。
(中には『人件費だけではなく、不正による損失もしくは不正監視のためのカメラ機器等の導入費』を考えた結果、自動精算機を導入した管理会社もあるとのこと。)
確かに、どの駐車場にも意外と場内監視カメラは設置されていなく、設置されていたとしても全ての範囲は到底網羅されず、その台数も数える程だ。
アメリカ人がよく『日本は車上荒らしが少なく、治安が良い』と言っているイメージがあるため、監視カメラの少なさを意外に感じていたが、聞くところによると地域性があるようで、裏通りのような、俗に言う『夜の一人歩きは危険』な地域だと、やはり頻繁に車上荒らしがあるそうだ。
(ちなみに、ロスで訪問したアマノのアナハイム工場は、少し離れた所にそういった『ハーレム』と呼ばれる地区があるらしく、何台か社用車丸ごと盗難にあったらしい。)
アメリカの自動精算機
また、アメリカの自動精算機なのだが、第一印象として、日本のそれと比べると非常に大きい。(写真15)
写真15
アメリカでは、購入側から『○○位の大きさに収まるように』といった類の、大きさに関する注文は皆無とのことで、設計者も保守メンテナンスのやりやすいように十分なスペースをとって設計できるとのこと。
よって、どの精算機も非常に大きいのだそうだ。
また、アメリカは『駐車料金の支払いにカードを使用する割合が80%以上』とのことで、自動精算機も『現金及びカード用』と『カード専用』の2種類がある。
自動精算機を見て特に目を引くのが、液晶画面。
カラーで絵も表示される(写真16・17)ので、非常にきれいで見やすいし、利用者も利用方法がわかりやすいのではないだろうか。
写真16 |
写真17 |
カードの利用に関しては、精算機からオンラインで各カード会社に繋がっていて、その場で照会する仕組みになっている。
そのため、現金で精算するより30秒~1分程余計に時間がかかるが、それでも問題なくほとんどの人がカードで精算をしている。
管理側からしてみても、カード利用に関しては何の問題もないそうだ。
どの駐車場も特徴として、係員がいたとしても総じてその人数は少ない。
各精算所に一人ずついるのみだ。
(アメリカと比べるとはるかに規模は小さいが、ちょうどパルコパーキングのような形態だ。)
自動精算機のある駐車場等は、見たところ、どの駐車場においても実際に利用客に接する係員は0人だった。
マネージャーと呼ばれる総責任者(一人)がトラブルに備えて管理事務所に常駐しているらしい。
(よって、この種の駐車場の場合、厳密には無人とは呼べないが。)
サンフランシスコ2日目に訪問したリンカーンセンター駐車場で、そこのマネージャーから話を聞くチャンスがあったが、650台収容のこの駐車場にしても彼が一人で見ているそうだ。彼の他には、(あくまでもVALET要員として、)4人が勤務している。
実際、先程記述したように、通路の幅が広くとられているアメリカでは『ぶつけた、ぶつけられた』というトラブルも年に1・2回あるかないかだそうで、この駐車場でのトラブルというと、駐車券絡み(主に駐車券詰まり)がほとんどだそうだ。
また、利用客が特約店を利用した際は、各特約店のレジにおいて、『駐車券割引の磁気データ書き換え』を行なってしまうそうで、その点に関しても駐車場運営側の負担が少なく済むようなシステムになっている。
駐車場管理ソフト
さらに特筆すべきは、管理事務所のパソコンに導入している駐車場管理ソフト(写真18・19)で、これを利用することによって駐車場管理に必要な、管理者側の希望したデータをリアルタイムですぐに見ることができるそうだ。
写真18 |
写真19 |
このソフトを使うことによって、全ての発券機・自動精算機・出入口バーの昇降等のデータが見られるそうで、例えば『駐車券が詰まって利用客から苦情がある』時も、管理事務所においてあらかじめ『その種の苦情がくるであろうこと』がわかっているそうだ。
このソフトは、アマノ単独の製品ではなく、ソフト開発専門会社McGANN(マッギャン)がアマノと協力して開発したものだそうで、このソフト一つで契約車データや顧客利用データも含めた駐車場すべてのデータ管理・分析が可能とのこと。
当社事務所においてもコインパーキングのデータが集中管理できるようになったとはいえ、この分野においては、いささかアメリカの後塵を拝している印象を受けた。
このように、勤務人数に関してはとにかく『少ない』というのが率直な感想だが、少なくて済むそれなりの理由が何点もあるということが判明した。
ゴールデンパーキングにおいても、(一概に『すぐ減らす』という訳にはいかないが、)再度その勤務シフトを検討する必要がある。
特に第1ゴールデンパーキングは、現在、平日も土曜・休日も同じシフトを採用しているが、『空いている時間帯の係員を減らし、(必要とあらば、)混雑する時間帯の係員を増やす』等の新しいシフトの採用を早急に検討する必要がある。
また、このリンカーンセンター駐車場では、『ネスティング』という概念を採用しているそうだ。
ネスティング
『ネスティング』というのは、『駐車場内のスペースをそのスペースの位置条件を考慮して、1つのスペース毎にランク付けを行なう』というもの。
具体的にリンカーンセンター駐車場に当てはめて言うと、入口から一番遠い位置にある地下2Fが、センター内の住民用月極専用スペースとして割り当てられていて、入口に近い駐車スペースは全て、一般買い物客用として割り当てられている。
この発想自体は特に驚くものではない。
例えば、1ゴールデンパーキングでは、場所指定の月極契約には、屋上の一番奥や一般者には使いづらい斜面のスペースを割り当てているし、平塚市の駐車場でも、『階毎に基本料金の設定をかえている』ということを聞いたことがある。
この概念を『ネスティング』と呼ぶ、ということを知らなかっただけの話だ。
もし、大規模の駐車場を設計に携わる時等は、あらかじめこの概念を十分考慮に入れて、スペースの切り方を検討する必要があるだろう。
PAY ON FOOT管理方法
次に、PAY ON FOOT集金担当者からきいたPAY ON FOOT管理方法だが、①不正車(=料金未払車)を見つけたらまず、『出庫時の専用BOXへの駐車料金支払い』を促す催促状に不正車のフルナンバーを記入して、運転席のガラスに貼り付ける。
と同時に、不正車リストにフルナンバーを記入する。②翌日の集金時に、専用BOXの中身を回収して、未払いだった不正車には、フルナンバーから住所を調べて、再度料金支払いを促す封書を出す。
③これでも、未払いの場合は罰則金や諸経費を含めた料金を徴収しに行く。
②の封書を出した段階で、70~80%は回収できるそうで、②までの作業ならそんなに手間はかからないとのこと。
『恐らく、フルナンバーを控えてあることで、すぐに堪忍するのではないか』とのこと。彼一人で、12件のPAY ON FOOTを管理しているそうで、立体駐車場同様、勤務人数が日本に比べて格段に少ないということになる。
ちなみに、不正車リストにある車が再度不正した場合には、直ちにレッカー移動するとのこと。
料金後払いがほとんどの日本のコインパーキングでは、今のところ不可能な対応策だが、非常に有効な手段だ。
また、どのPAY ON FOOTも比較的均等に埋まっているのは、『(地理的な条件ももちろんあるが、)日本以上に車利用の多いアメリカにおいては、12時間12ドルの料金に魅力を感じる層が十分に存在し、利用客にリピーターが多いため』だそうだ。
ただし当然、回転率はあまり良くないらしい。
いずれにせよ、日本のコインパーキング管理方式は、料金はキッチリ回収できるが、不正車の取締りにためのビデオカメラの設置・ビデオによる不正確認・設備の保守等、アメリカと比較した場合に格段と経費がかかることは間違いない。
有人駐車場における係員の接客
次に、有人駐車場における係員の接客内容についてだが、非常によそよそしく感じられるものが多かった。
アメリカにおけるレストラン等のサービスと比べると雲泥の差が感じられる。
これはまず、『チップがもらえるか、否か』に起因していると推測される。
駐車場係員・レストランのウェイター(ウェイトレス)ともに、ほぼ法定最低賃金で雇われているそうで、レストランのウェイター達は、チップで生活が成り立つとも言われているらしい。
よって、チップをより多くもらうため、自分のお客に対して一生懸命サービスに徹する。
一方、駐車場係員は、チップをもらうことはまずないという。にもかかわらず、十分働き手がいるのだそうだ。
これでは、レストランとの接客内容に明確な差が現れるのも納得がいく。
接客の内容が今ひとつ気持ちよく感じられない理由として次に挙げられるのが、アメリカが銃社会であるということだ。
特に、広い敷地内に少人数で勤務しているケースが多いため、お客へサービスするというよりも『お客が不審人物でないか』と確認している向きもある。『お客様に安全を提供することが、一番のサービス』と理解すれば多少納得はいくが…。
やはり、係員が自らの保身を最優先に考えているような印象で、日本人の感覚では少し違和感を覚える。
現にほとんどの精算所には駐車券投入口(写真20)があり、そこに券を投入することによって精算所内の係員へ券が届く仕組みになっている。
写真20
どちらかというと、利用客と極力接触しなくて済むシステムになっているため、サービスをする機会自体が少ないとも言える。
第2ゴールデンパーキングの深夜帯に近い印象を受けた。
日本でもより治安が悪くなれば、こういったシステムの導入を検討しなければならなくなるだろう。
いずれにせよ、(背景の違いはあれ、)少なくとも係員の接客においては、(まだ目指すレベルへ到達しているとは言い難いものの)ゴールデンパーキングの方が格段に勝っている印象を受けた。
各駐車場の料金体系
次に、各駐車場の料金体系について。
全ての駐車場が『MAXIMUM(打ち切り)制度』(写真21)を採用している。
(あくまでも一泊料金とは別。)
さらに申し合わせたように、駐車券紛失の際は打ち切り料金を支払うよう表記(写真22)されている。
写真 21 |
写真22 |
これは、『悪意ある(=故意に駐車券をなくし駐車料金をごまかす)者を認めない』という考えのもとに設定されているとのこと。
この考えのもとでは、本当に駐車券を無くした利用客は救済されない。
しかし、『失くしたら1日分』という料金体系は認識されているそうで、特に利用客との間にトラブルはないらしい。
アメリカでは、何日も駐車しておいて『駐車券をなくした』というパターンが多いそうで、この場合に備えて、毎晩閉場前に残車のフルナンバーを控えて対応しているとのこと。(これは第1ゴールデンパーキングでも毎晩行っている。)
要するに、経営者側が『悪意ある者がいる限り全てのお客様を満足させることは不可能(=実際紛失した利用客はこの考えの犠牲となる)』というスタンスに立っているということだ。
あくまでも『お客様全てに満足してお帰り頂く』ことが基本だが、(日本にそのやり方をそのまま持ち込むかどうかは別として、)アメリカのこういうやり方は参考になる。
料金体系で次に目に付くのが、多くの駐車場が料金表示看板の下に出している『EARLY BIRD SPECIAL』(写真23)や、『MATINEE SPECIAL』(写真24)といった看板だ。
写真 23 |
写真 24 |
これは、『ある一定の時間帯に入庫し、設定された時刻までに出庫すると○○ドル』といったサービスだ。
(たとえば、11:00~14:00の間に入庫し、18:00までに出庫すれば10ドル、等)ピークの時間帯が明白な駐車場には、弱い時間帯を埋める可能性のあるシステムだ。夜にピークのある第2ゴールデンパーキングへの導入を検討する必要がある。
また、ほとんどの駐車場が、15(20)分毎○○ドル(相場は2ドル~2ドル50セント)という基本料金体系(昼・夜による料金の増減はない)を採用している中で、興味深い料金体系を採用している駐車場があった。
その料金体系は下図の通り。
平日&土曜日 7時∼18時 |
←左記以外 =夜間&休日 |
|
---|---|---|
0∼1時間 | 2 | 1 |
1∼2時間 | 3 | 2 |
2∼3時間 | 4 | 3 |
3∼4時間 | 6 | 4 |
4時間以上 | ¯ | 5 |
4∼5時間 | 8 | ¯ |
5∼6時間 | 11 | ¯ |
6∼7時間 | 15 | ¯ |
7∼8時間 | 20 | ¯ |
8時間以上 | 25 | ¯ |
この駐車場に対しては、何のコネもなく、しかも無人の大型自走式駐車場であったため、詳しい話しは聞けなかったのだが、おそらくこの料金体系は、顧客利用時間帯統計を十分に分析(もしくは推測)の上、設定されたものであろう。
我々がこの駐車場を見学したのは午後4時頃、(朝早く仕事をはじめ夕方には帰宅するアメリカ社会においては、ちょうど日本の帰宅ラッシュ時間にあたる時間帯)だったのだが、街中心部に位置する高立地条件もあり、3機あった自動精算機の精算待ちの列が途切れることはなかった。
新商品の開発を含めて、『現場で勤務して感じるイメージではなく、あくまで正確な数字を利用した定期的な顧客利用データの分析に、より一層力を注がねば…』という思いを強く持った。